×人肌○恋人依存症







「レイヴン、暑い。離れて」

「んー、もうちょっと」


そう言って、何時間ひっついてるんだお前は!

ぎゅーっと効果音がついても可笑しくはない包容力で、朝から小一時間も抱きしめられたら、いくら恋人でも少し・・・いや大分暑い。
ってか、寒い地方なら良いけど、ここマンタイクなんですけど!

ベットの上でレイヴンが胡坐を掻かいた上に座らされ、腰をがっちりと意外と逞しい腕でホールドされている。
そもそも今日の午前中は疲れた体を癒すためにあてがわれた時間だと言うのに、これでは逆にしんどい。いや、嬉しくないわけでは、ないけど。




「あーつーいー」

ぐいーっと腕から逃れようとすると、レイヴンは嫌々と頭を私の背中にうずめてくる。
ぐりぐりと首筋にも顔を埋めるので、恥ずかしいのだが、その前にくすぐったい。あと、髭がなんか痛いんですけど。


「あ、ちょっ・・・くす、ぐった・・・あははっ・・・も、コラ!!」


ばしっと頭を叩くとようやく「いたいわよぉ」とやっと顔を上げて、こちらを見た。




「もー、どうしたの?今日変だよ、レイヴン」


少し真面目に聞くと、レイヴンは拗ねた子供みたいな顔をして言った。


「んー、なんかね、少し人肌恋しいっていうか、寂しいって言うか、ちゃんに、触ってたい・・・の」


嫌?と上目遣いで見られて、そんなことされたら嫌なんて言えなくなる事を知っててワザとじゃないかと思いながらも、素直に彼に体重を預けた。

時々レイヴンはそんなことを言って私に引っ付いてくる。
前まではそんな素振り見せなかったのに、恋人になってからはなんというか甘えてくるのが多いなぁとは感じる。

それは彼の過去のせいなのか、はたまた元々そういう性格なのかは知らないが、それでもやっぱり皆には見せない一面を見れるというのは彼女の特権というか役得のような気がして、胸がきゅうと締め付けられた。





「皆が呼びに来るまでだったら・・・いいよ」



その声にぱあっと顔を輝かせた彼はぎゅうぎゅうと私を抱きしめて「ちゃん、大好き〜」と笑顔で叫ぶ。

ああ、もう本当にこのおっさんはなんて、可愛いんだ。
熱いんだけど、やっぱりこの背中とお腹に感じるこの体温からは離れたくないと思ってしまって。

首だけ後ろに向けて笑いかけると、触れるだけのキスをされた。




そのあと、リタが呼びに来てレイヴンが術をかけられるのなんて、いつもの事だ。









inserted by FC2 system