「くー・・・・すぴー・・・」
ちょっとちょっと、これは逆なんじゃない?
そう思ったのは何回目だろうか。
膝の上で眠るを見つめ、レイヴンは視線を窓の外へ移した。
先ほどより少し傾いた日は、時間の経過を物語っている。
「ちゃーん」
少し小声で呼んでも、起きる気配はない。
別にが膝の上でぐっすりと眠っているのは嫌ではない。
というか、むしろ近くにいてくれるのは嬉しい限りであるのだが、いかんせんこの体制がなんとも辛い。
・・・自覚してやってんのかねぇ、この子。
いやに限ってそんなことはない事は百も承知だが、少しふざけてないと理性が切れそうだ。
起こせばいいと思うのだが、この幸せをそうやすやすと手放すのも惜しい気がする。
ほら、この寝顔すっごい可愛い。
さっきから観察してて、この角度が一番可愛い。
なんて、変態じみた事を思いながら、思わず緩んでしまう頬にも気づかない。
「ん・・・」
少し掠れた声を上げてごろんと寝返りを打つ。
ああもう、だめだ、我慢できない。でもなんかしたら絶対怒られるよなぁ。がんばれ、俺。
くそ、聞こえてくる寝息とか、時折漏れる可愛い声とかなんかもう俺を試しているんだろうか。
あ、なんか心臓痛い。嬉しくて、柄にもなく緊張とかしちゃって、どうしよう。怖い、この子怖いわ。
普段は手を繋ぐのも恥ずかしそうにするくせになんだって今日はこんな積極的な、いやいや話してたら眠そうにしていたので「寝ていいわよ」と俺の肩を貸して、しばらくして体制崩して膝に乗ってしまっただけなんだけど。
キスぐらいならいいだろうかとも思うけれども、なんというか今までにそういう経験が少ないと顔を赤らめていたこの可愛い俺の彼女にはしづらいというか、どうせだったら起きたときにしてあげたいと言うのも彼氏として当然に思うことであって、決して寝込みを襲うような失態は犯すまいと二分前ほどに誓ったはずなのだが、限界。やばい。助けて。
でもでも、やっぱり彼氏として―!
この天然お嬢様が起きるのはいつなのか。
それは、神のみぞ知る。
がんばれ、俺の理性!