「レイヴン、好き」

の言葉に一瞬、思考が停止した。



「え、な・・・」

「好き、レイヴン」


そういってぎゅうっと抱きついてくる恋人を受け止めて、頭にはさっきよりはてなマークが浮かび上がる。
嬉しい。嬉しすぎるけど、いつもは、自分から好きだなんて言わないのに。

「俺のこと、好き?」って聞いて少ししてから顔を真っ赤にして「好き、です」なんて可愛い感じに言ってくれるのもいいんだけど、今日は積極的過ぎて逆におっさん心臓が爆発しそうよ。




「ど、どうしたの?ちゃん」

俺は慌てて、行き場のない手をもごもごとさせていると、ちゃんが遠慮深そうに呟いた。


「昨日ね、夜ね、見ちゃったの」

「え、見たって―」



何を?


言いかけたけれど、思い当たる節があって言うのをやめた。

昨日は久々にダングレストによって、いつもの店に挨拶に行って、そこでいつものように店の女の子と喋ってた。
それを見てしまったのだろうか。は俺とその子がどんな関係かなんて、言わずともわかると思うけれど、やはりそれでも不安になってしまったんだろう。


というかもしかして、それは「嫉妬」というものなのだろうか。
いや嫉妬とまでいかなくても他の異性と一緒にいる俺を見て少しでも不安になってこんな風に可愛く抱きついてくれるなんて、悪いとは思いつつも顔が緩む。
寧ろもっと怒って「私だけを見て」といってくれたら、俺はきっと喜びのあまりキスしまくって押し倒してしまいそうだ。

不謹慎かもしれないが、俺はそれくらいこの子のことが好きだし、愛してる。



「ごめんね、わかってる。でもね、少し、少しだけ、寂しかったの」


ぎゅうと胸に顔をうずめてくる を見て、胸が熱くなる。


ばかだなぁ、俺。

嬉しい反面、こんな風にに悲しい顔をさせてしまっているのも事実で。それは俺のせいで。
と一緒に酒飲んだ方が何百倍もおいしいのに、と昨日の自分を後悔した。
宙に浮いていた手を、の背中に回して負けないくらい抱きしめる。



「ごめんね、ちゃん。ごめん。不安にさせちゃったのね」

「・・・・」



は無言で頷くと、涙が浮いているであろう顔を俺に見せないように伏せた。
その様子を見て、また胸のあたりが痛くなる。



「ごめんね。大好きよ、ちゃんが、一番好き」

「うん」

「好き。愛してる。」

「うん」

「大好き」

「も、いい」



恥ずかしい。といって、彼女は目を泳がせた。

可愛い。愛しい。もっと、もっと言いたくなるじゃない。
ああ、でもまって、やっぱり愛情を表現するのはコレが一番いいのよね。
そう思って彼女の頬に触れて顔を上げさせ、もう片方の手は腰に回した。


も俺が何をするのか気付いたのか、緊張できゅっと口を横に紡いだが、ゆっくりと瞼を閉じる。

ふるふる震える睫毛がやばい。可愛い。








愛しい君に、ありったけの愛を贈ろう





ゆっくりありったけの愛情と優しさをこめて深いキスをした。
不安なんて俺がこれで全部消し去るから。











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